2009年9月6日日曜日

東北紀行 其の二 湯田川温泉

今回の東北旅行の主たる目的は墓参りであった。

多忙を理由にこの七年ばかり疎遠になっていた。

其の罪滅ぼしとついでに温泉三昧をかねて計画した旅である。

本音を暴けば目的が手段といえなくもない。

途中、鶴岡で一泊するのは、

湯田川温泉の寂れた雰囲気が好きなのと、

そこに住む友人と、

旧交を温めようという重いがあってである。

墓参の地は今少し北の秋田である。

鶴岡の友人は京都の出身であり、

若い時代、京都でよく一緒に呑んだ仲間である。

私が秋田出身で京都に根付き、

彼は仕事の都合で鶴岡に家を建て根付いた。

で、今は私が京都で彼は鶴岡と入れ替わり。

ちょっと奇妙な取り合わせと思うのだが、

今の時代、さほど珍しくもないことかもしれない。

村上のサービスエリアで二時間あまり休み、

九号線を走って鶴岡に着いたのは午前十時頃。

夕刻に湯田川温泉でと約束していた手前、

相手の都合もあると思うと、

もう着いたとは連絡し難い。

そこで、鶴岡の市内をうろうろしながら、

この辺の名物“麦きり”の美味い店を探す。

其の途中、観光案内によってクラゲの水族館を紹介される。

クラゲの発光体採取で有名になった水族館である。

市街地からやや外れた海沿いにそのクラゲ水族館はあった。

夏休みということもあって、

来場者は思いの他多い。

水族館の窓口にいる職員、

何を思ってか、

この水族館の名物はクラゲラーメンと薦める。

おいおい、クラゲ見にきた客にクラゲラーメンはないだろ!

といった神経は彼女にはないようだった。

クラゲ水族館で現物入りのラーメンか〜〜!

とてもその気にはなれなかったね〜〜。

昼前に水族館を出て、

観光案内で紹介された鶴岡城公園近く店を訪れる。

茶屋風も店構えで少し期待しながら麦切りを頂く。

嬉しいことに漬け物がサービス!

大好物の小茄子の漬け物が山盛りに群れていた。

しかし、やはりかなり塩辛い。

一個だけ頂いて感謝!

全てにおいて味は濃いのだが、

漬け物サービスに免じて美味しかったことにして納める。

食事を終え時間を見ると二時少し前、

取りあえず友人に連絡すると到着が早すぎるという。

旅館はまだ準備前出迷惑だろうから、

近所の神社ででも時間潰せという。

しかし妻は取りあえず旅館に連絡。

すると有り難いことにいつでもどうぞという返事。

陣内旅館さん、万歳!温泉だ!

鶴岡の湯田川温泉は、

少し南に位置するあつみ温泉と同じく古い歴史を持つ。

しかし、なぜかあつみ温泉街のように発展はしなかった。

しかも、過去に何度か訪れたことのある、

神社脇の古風な旅館は既に廃業していた。

其の神社前で時代劇の撮影が行われたらしい。

町内からエキストラが集められ、

一時は賑わったが、それだけで終わったと友人は呟く。

宮沢りえが泊まったとかなんとかといっていたが、

何とも閑散とした温泉街の風情が空しく聞こえた。

この温泉、湯質は女性的で柔らかく、

温度も四十度くらいでゆるりと長湯出来る。

遅れて到着した友人と近場の一緒に公衆浴場へ、

そこで地元の先客と会話を交わす。

中の一人、この街は湯しかないと零す。

つい、こんなすばらしい温泉があるのに、

温泉しかないはないんじゃないと、

説教がましいことを云ってしまった。

しかし本当にこの柔らかで優しい湯触りは絶品である。

食事はプロの料理人ではなく、

当旅館の亭主の手作りということであった。

決して盛りつけも包丁さばきも、

京料理と比べて巧みとは云えないが、

持て成しの心がそこはかとなく感じられ、

それなりに楽しめた料理だった。

朝食も同様で味付けはそれなりにであった。

それはそれで楽しみようとは思ったが、

あつみ温泉で宿泊すれば、

たとえ小さな旅館でも膳は料理人の設えである。

料金の割にといった思いが、

ほんの少し心に引っ掛からぬではなかった。

友人はこの寂れようを嘆いていたが、

個人的にはこういった寂れた温泉宿の、

心温まる持て成しの方法も工夫次第で、

一興かもしれないと感じたのだった。

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