2009年6月3日水曜日

においを嗅ぐ

昨日某新聞の情報欄で、 
夫の臭いが気になる妻についての記事があった。 
ウトウトしている自分の顔に、 
消臭スプレーを掛けられた夫の困惑ぶりが、 
何とも痛々しげで他人事とは思えない。 

あの例のテレビコマーシャル、 
男達の臭いに絶えられなくなった妻が家出する・・。 
メーカーは我が意を得たり!のつもりだろうが、 
娘に洗濯器への同衾を拒否される親父族、 
果たして苦笑いだけで済んでいるのだろうか? 

この記事の筆者は 
近年の住宅は下水や排水設備が完備して、 
ほとんど臭いのしない家か多いが為に、 
皆が臭いに対して過敏になっているのが、 
許容度の低下に繋がっていると解説している。 
果たしてそうだろうか? 

こっそり枕にスプレーするくらいなら、 
それは優しさとして受け入れる事ができる。 
しかし、頭から加齢臭がすると消臭スプレーでは、 
その狼藉な振る舞いに、 
私なら烈火の如く怒りまくるに違いない。 

そもそも臭いはその個人の自己主張であり、 
同時に個性の一端でもある。 
それを加齢臭などと命名して、 
如何にも死臭身辺に漂うがごとく、 
大げさに宣伝したマスコミの罪、甚大である。 

ところで、妻には私の後ろからにおいを嗅ぐ癖がある。 
クンクンと鼻が付かんばかりにしてにおいを嗅ぐ。 
若い時分はそれも愛情表現と、 
勝手に思い込んで笑っていたのだが、 
最近これが大いなる勘違いだった事が分かった。 

私は実は一人暮らしの頃から、 
洗濯と掃除は大の苦手だった。 
だから恐らく私の下宿部屋は、 
私の体臭が満ち満ちていた事と思われる。 
しかしあの頃、あの時代は、 
そういった臭いを誰も特段気に掛けたりはしなかった。 

それこそ何処へ行っても、 
様々な臭いが街中に満ち溢れて返っている時代だった。 
だからそれほど食生活に恵まれていない若者の体臭など、 
あるいは高が知れていたのかもしれない。 

妻にこの件を書くと告げたら、 
辞めてよ!臭いフェチと思われる! 
においを嗅ぐのはそんなんじゃなくて、 
洗濯時期を測ってたのよ・・と主張する。 
まあそう云うなら額面通り信じるとして、 
じゃあ何かい!今までの私の思い込みは、 
一体なんだったのだろうかと心が冷えてしまう。 

女性はどうやら、 
男という生き物は臭いに鈍感だと、 
勝手に決めつけている節がある。 
だから消臭スプレーを頭ごなしに掛けたりといった、 
暴挙にでるような呵責ない行動に出る事ができる。 

男がもしそんな行為に出たらと想像すると、 
その時の光景が目に浮かび、 
背筋が凍り付いてしまう。 
普通に神経の男に、 
妻の頭から消臭スプレーを振り掛ける勇気など、 
少しばかりも持ち合わせは無いのである。 

男の優柔不断に比して、 
いざとなれば女性の方が、 
思い切りが良いとがよく口の端に上る。 
消臭剤の頭上噴射がこれと同列とは思わないが、 
できればこういった思い切りのよい暴挙を、 
余り日常で発揮して欲しくはないものである。 

妻の言によると、 
彼女が私のにおいを嗅ぐのは癖ではなく、 
私の衣類の洗濯時期の測量が目的らしい。 
がしかし、それならば何も私の背中から、 
クンクンとにおいを嗅ぐ必要などは無いではないか。 

脳内神経物質の一つ、 
セロトニントランスポーターに存在する、 
s遺伝子というちょっと寸足らずの遺伝子。 
多くの日本人にあるという、 
不安に敏感なこの遺伝子を持つ彼女は、 
きっと私の存在を臭いで確認しているに違いない。 

ほ乳動物にとって臭いの感覚は、 
お互いの存在確認の重要な一手段に違いないのである。 
妻がなんと主張しようが、 
洗濯時期の測量手段が目的だけではなく、 
これはきっと愛情確認も兼ねているに違いないと、 
この際、勝手に結論付けして、 
一人でほくそ笑む事に決めている。

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