妻が笑いながら呟いた。
どこかに子供いないの?だって!
おいおい・・俺の性格知っているだろうが!
結婚考えない相手と何するなんて出来ないよ!
子供欲しかったら君との間で作っているさ・・。
すると妻は妙にしんみりと呟いた。
そういう人だから結婚したのだと・・。
おいおい、話、違うくない?!
そりゃ若い時代、
女っ気なかったとはいわないさ。
しかも妄想も欲望もなかったともいわない。
だけど遊びでそんなことをする奴の気がしれなかった。
そんな下品な人生考えられなかった。
別にいい格好して云ってんじゃない。
遊郭で遊ぶと云う意味が理解できなかった。
たとえそれが仕事とはいえ相手は同じ人間じゃないか。
人間の性を金で売り買いなんて、
自分が惨めじゃないかと思ってしまう。
男はその相手のそのところから生まれた。
その相手を金で売り買いするなんて、
狂気の沙汰にしか思えなかった。
よく男の甲斐性って言葉が、
その種の男達の正当化に使われる。
何が甲斐性じゃ糞やろう!
そう思っている男達も、
この世は多いんだってこと、
世の女性達、ご理解あれ!
別に子供が欲しくて君と結婚したわけじゃない。
これは断言できる!
確かに結婚した以上、
子供が欲しいと思わないわけではなかった。
しかし、君はやたら神経質で、
体もそれほど強くはなかった。
本能的に子作りを忌避していたのかもしれない。
女と云う性を遊び相手に考えたことはない。
いつも頭の中はエゴイスティックな自己の世界で満杯だった。
出来れば女と云う邪悪な存在、
時間の掛かる面倒な相手と、
拘り合いたくはなかったくらいだった。
それでもまあ青年は荒野が好きと同じくらい、
きっと湿潤な大地も好きなのかもしれない。
健康な男として、
秘め事が嫌いとは決して云えたない。
だけど其れは相手が望み一生を約束しての話。
当然のことと思っていた。
父からの伝言だったかもしれない。
生き方は恐らく父から学んだ。
母の方が野心家だった。
没落した父方の家系を見下すようなことを、
彼女は私に対していったことがある。
それでいて彼女は、
一族の家系を嬉々として胸に抱き誇っていた。
彼女は経済的に豊かな家に生まれ、
経済的になに不自由のない学生時代を過ごした。
その即物的で権力志向の強い彼女の価値観を、
私はその頃から嫌悪し始めたのかもしれない。
父が死に兄が死んで、
妻は私が彼の地へ戻るかもしれないと心配した。
しかし時代は違う。
もう男子一系などという、
亡霊に縛られる所以はない。
滅びたら、
一族の誰かそういうことの好きな者が、
その家系を継げばいいのである。
搾取によって出来上がった家系図など、
実に下らない幻想に過ぎない。
確かに遺伝子の奇妙な繋がりを感じる妙味はある。
其れはしかし人の世の仇に過ぎない。
大切なのは、
与えられた一生をどう背筋を伸ばして生きるか、
それ以下でもそれ以上でもない。
私にとっての遊びは、
ほとんどが頭の中にある。
実にお金の掛からない、
しかも広大で捉えようのない摩訶不思議な世界。
一冊の本があれば、
後はインパルスが勝手にあちらこちらと彷徨い歩く。
そうした時間に追い回されているうちに、
私の中の時が過ぎて行く。
今はそれにコンピューターが加わった。
これも私の脳と同じかそれ以上に未完な世界。
関わり始めたらもう抜き差しならない。
時間はいかほどあっても、
これで十分という事はない。
これは行き着くところ嗜好の問題かもしれない。
蓼喰う虫も好きづきである。
それでも関わった相手を、
物のように投げ捨てる、
そんな戯けたことはせずに済んだ。
これは誇れる人生だったと胸を張れる。
妻は私に隠し子があったら、
一体どんな顔をするのだろう・・。
ちょっと笑って受け入れるだろうか。
それとも悲しげに私を見つめるだろうか。
残念にも私の人生にそういった存在はない。
いや、嬉しいことに・・というべきだろうか。
複雑な気分・・・。

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