2009年6月10日水曜日

遊びをせんとや生まれこん

妻が笑いながら呟いた。

どこかに子供いないの?だって!

おいおい・・俺の性格知っているだろうが!

結婚考えない相手と何するなんて出来ないよ!

子供欲しかったら君との間で作っているさ・・。

 

すると妻は妙にしんみりと呟いた。

そういう人だから結婚したのだと・・。

おいおい、話、違うくない?!

 

そりゃ若い時代、

女っ気なかったとはいわないさ。

しかも妄想も欲望もなかったともいわない。

だけど遊びでそんなことをする奴の気がしれなかった。

そんな下品な人生考えられなかった。

別にいい格好して云ってんじゃない。

 

遊郭で遊ぶと云う意味が理解できなかった。

たとえそれが仕事とはいえ相手は同じ人間じゃないか。

人間の性を金で売り買いなんて、

自分が惨めじゃないかと思ってしまう。

男はその相手のそのところから生まれた。

その相手を金で売り買いするなんて、

狂気の沙汰にしか思えなかった。

 

よく男の甲斐性って言葉が、

その種の男達の正当化に使われる。

何が甲斐性じゃ糞やろう!

そう思っている男達も、

この世は多いんだってこと、

世の女性達、ご理解あれ!

 

別に子供が欲しくて君と結婚したわけじゃない。

これは断言できる!

確かに結婚した以上、

子供が欲しいと思わないわけではなかった。

しかし、君はやたら神経質で、

体もそれほど強くはなかった。

本能的に子作りを忌避していたのかもしれない。

 

女と云う性を遊び相手に考えたことはない。

いつも頭の中はエゴイスティックな自己の世界で満杯だった。

出来れば女と云う邪悪な存在、

時間の掛かる面倒な相手と、

拘り合いたくはなかったくらいだった。

 

それでもまあ青年は荒野が好きと同じくらい、

きっと湿潤な大地も好きなのかもしれない。

健康な男として、

秘め事が嫌いとは決して云えたない。

だけど其れは相手が望み一生を約束しての話。

当然のことと思っていた。

 

父からの伝言だったかもしれない。

生き方は恐らく父から学んだ。

母の方が野心家だった。

没落した父方の家系を見下すようなことを、

彼女は私に対していったことがある。

 

それでいて彼女は、

一族の家系を嬉々として胸に抱き誇っていた。

彼女は経済的に豊かな家に生まれ、

 

経済的になに不自由のない学生時代を過ごした。

その即物的で権力志向の強い彼女の価値観を、

私はその頃から嫌悪し始めたのかもしれない。

 

父が死に兄が死んで、

妻は私が彼の地へ戻るかもしれないと心配した。

しかし時代は違う。

もう男子一系などという、

亡霊に縛られる所以はない。

滅びたら、

一族の誰かそういうことの好きな者が、

その家系を継げばいいのである。

 

搾取によって出来上がった家系図など、

実に下らない幻想に過ぎない。

確かに遺伝子の奇妙な繋がりを感じる妙味はある。

其れはしかし人の世の仇に過ぎない。

大切なのは、

与えられた一生をどう背筋を伸ばして生きるか、

それ以下でもそれ以上でもない。

 

私にとっての遊びは、

ほとんどが頭の中にある。

実にお金の掛からない、

しかも広大で捉えようのない摩訶不思議な世界。

一冊の本があれば、

後はインパルスが勝手にあちらこちらと彷徨い歩く。

そうした時間に追い回されているうちに、

私の中の時が過ぎて行く。

 

今はそれにコンピューターが加わった。

これも私の脳と同じかそれ以上に未完な世界。

関わり始めたらもう抜き差しならない。

時間はいかほどあっても、

これで十分という事はない。

 

これは行き着くところ嗜好の問題かもしれない。

蓼喰う虫も好きづきである。

それでも関わった相手を、

物のように投げ捨てる、

そんな戯けたことはせずに済んだ。

これは誇れる人生だったと胸を張れる。

 

妻は私に隠し子があったら、

一体どんな顔をするのだろう・・。

ちょっと笑って受け入れるだろうか。

それとも悲しげに私を見つめるだろうか。

残念にも私の人生にそういった存在はない。

いや、嬉しいことに・・というべきだろうか。

複雑な気分・・・。

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