2009年5月31日日曜日

ヒメダカ

この時期になると毎年ヒメダカが生まれる。
毎年といっても、
始めたのは三年あまり前で、
衝動的に十匹をペットショップで購入した。
衝動的にといっても一匹の値段は高が二三十円。
表現として適切かは疑問が残る。

それというのも妻がNTTに応募して、
ガンダムのフィギュアが当たった。
なぜそんな応募をしたかも覚えたはいないが、
とにかくプラスティックの展示ケース付きだったのである。

ガンダムは直ぐに甥っ子に送って事は済んだが、
その透明ケースの処分に困った。
縦二十五センチ横四十センチ深さ二十五センチ程のケース、
どうしたものかと考えた結果のコペルニクスだった。

実はミジンコを飼いたかったのだが、
それは何処にも売っていない。
で、ふと気が振れてなぜかヒメダカに決まった。
ペットショップの主人は、
初めてなら十匹くらいからと薦める。
何の思慮も働かないわたしは直ぐさま従ったのだった。

初めはその透明ケースをひっくり返し、
そこに水草を一緒に投入して悦に入っていた。
このヒメダカたち、
普段はわたしの足音で逃げ回る割に、
餌をやる時だけは当然のようにわやわやと集まって来る。

程なくして一二匹は途中で腹を上に向けたが、
ほとんどはよく餌を食べ元気に成長した。
飼い始めて二ヶ月もすると体も倍程に成長し、
五月も中頃には産卵を始めたのである。

初めの産卵で生まれたのは五六十匹。
すごいと思うかもしれないが、
直径0.1ミリ体長3ミリ、
群れで泳ぐ風景は精子の行進を彷彿させる。

その年は秋までに断続的に産卵があり、
生まれた数はざっと三百匹ほど・・。
そのうちし五十匹程は間もなくお陀仏してしまう。
冬を越して翌年、
成魚に成長できるのは全体の半分程である。

それでもその数なんと百五十匹。
面白がって覗く友人知人に無理矢理押し付けても、
百匹近くは年を越す羽目になった。
いかに小さなヒメダカといえども、
当初のケースにその数が収まるはずもなかった。

不要な火鉢に水を張ったり、
その辺に転がっていた植木鉢の底を塞いだりと、
いつの間にやらヒメダカの住処は、
庭から玄関にまで縄張りを広げる事となった。
挙げ句、なんという事でしょう!
家内からいい加減にしたらと、
顰蹙を買う事態にまで至ってしまったのである。

しかし彼女、
制作の合間などに鉢を覗き、
野蛮にも、ヒメダカ掬いを敢行する。
ストレス発散のつもりなのだろうが、
彼女の運動神経では中々捕まらない。
わたしは後ろでフフンと嘲る。

今年も既に三四十匹は生まれている。
先日、妙にヒメダカを気にいった友人が、
産卵した藻を持ち帰ってくれた。
恐らくそちらの方でも、
同様の現象が生じている事と思われる。

この藻には今一つ、
タニシの卵というお伴が付いている。
ヒメダカの卵は直径0.5ミリ程だが、
タニシの卵はミクロ単位である。
しかもカエルの産卵と同様に、
ゼラチン質の中に大量に産みつけられる。

これが実に面白い。
生まれたてのタニシは幼生で孵化する。
その大きさはミジンコ並みで、
普通に眺める限り只の黒い点である。
しかし拡大鏡でその姿を見ると
後ろにスクリューのようなものが付いている。
その推進翼を回転させ実に素早く動き回る。
その姿からはとてもあののろまなタニシは想像できない。

興味の湧かない方にとっては、
恐らく地味でマニアックな世界だが、
これがいざ関わってみると、
速いサイクルの小さな宇宙が展開されているようにも思え、
いつの間にやらのめり込んでしまう。

親が生まれたての稚魚をパクリとやる為に、
産卵した藻を隔離するのだが、
それでも時々鉢の片隅に孵化して浮かび上がる。
そんな稚魚を掬って隔離したりしていると、
ちょっと善行を施したごとき気分を味わえたりして、
眺めているとつい時の経つのも忘れてしまう。

何しろリーズナブルな趣味なのである。
その割には中々飽きない世界。
悪趣味と笑う前に、
ヒメダカ掬いも楽しめるこの世界、
一度連中と関わってみるのも、
一興かと思うのだが・・・。

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